顎関節症治療 TEMPOROMANDIBULAR

不快症状と噛み合わせについて

顎関節症治療

私たちの日常生活では色々な改善しづらい不快症状があります。例えば、頭痛、肩こり、耳鳴りなどがそうです。これらの症状が咬み合わせの歪みを正すことにより消失または軽減されたということを耳にされたことはありませんか? 顎の関節の周りには多くの神経が走っており日常生活での姿勢不良やまたストレス社会におけるくいしばり等、現代社会における習慣・環境・歯並びおよび修復物の不正によって咬み合わせや顎の関節が正しい位置より歪み周囲の多くの神経・血管に影響を及ぼすのではないか―と考えています。

噛み合わせの不正によって引き起こされる可能性のある全身の症状

咬み合わせの不正が原因となって起こる症状かどうかはまだはっきりしている訳ではありませんが、私たち歯科医師は歯並びおよび修復物の不正により引き起こされた咬み合わせの不正を正す治療(以下咬合治療と呼ぶ)を行う際に、頭痛、肩こり、耳鳴りなど直接歯と関連がなさそうな悩みまで改善されることもあります。 どのようなメカニズムでこのような事がおきるのかを知りたく理解のある患者さまのご協力の下、色々な方向から考えてみました。

下顎の運動は顎関節と多くの筋肉によってその運動が制御されています。顎関節は特殊な関節で、一つの骨で人体の左右に渡るまれな関節です。また下顎は背骨の上に乗っかっている重い頭蓋(6kg)にぶら下がり頭蓋・下顎共に重力の影響を受け、複雑な運動をします。ですから失った咬み合わせを再構築する作業は、この複雑怪奇な運動の行き先に全身的に見て前後左右のバランスの取れた位置に安定するようにしなければなりません。

顎関節症の4大症状

咬み合わせに関連して全身に不快症状のある方の診断から治療(保険適用外) ※顎関節症を併発している方は一部、保険が適用されます。咬み合わせ由来と考えられる頭痛・肩こり・手のしびれ・咬み合わせが辛い・その他の不快な全身症状のある方に多方面からお調べし、歯科医師自身の手により咬合誘導のためのマウスピースを作製し、装着過程で身体の症状の変化を観察しながら微調整を行い、正しい方向へ誘導します。
ただ口が開かないこと一つを捉えてもその病態が筋肉疲労によるものと顎関節がこわれてしまった場合とを見分けなければいけません。

  • Case01

    口が開かない

  • Case02

    関節部や顔面の筋肉の痛み

  • Case03

    顎を開閉する時の関節部の雑音

  • Case04

    顎の開閉時の軌道の歪み

顎関節症治療について

平成7年に顎関節症の診査が学校歯科検診に導入されました。それ以来、以前にも増してむし歯・歯周病以外で歯科に相談に来られる患者さまが増加しています。
まずは症状を知るために問診票に記入をしていただきます。頭・顎・首やのどなど全身を細かくチェック。歯科医師と相談した上で診療方針をお選びいただけます。
A. 顎関節に限定した治療のみ → 保険適用
B. 全身に配慮した上で咬み合わせによる不快症状を取りながら顎関節・咬み合わせを正しい位置に誘導する治療を希望 → 自由診療(※費用¥39,810(税込))
Aですと、保険を適用できる代わりに細かな診断までできませんので本気で顎関節・咬み合わせでお悩みの方には、自由診療のコースをおすすめします。

顎関節症の治療方法

スプリント療法

寝るときにマウスピースを装着して、食いしばりや歯ぎしりで発生する力を軽減する治療です。あごの関節の位置をわずかに変えることで、あごにかかる負担を減らします。

治療の注意点・リスク

  • 公的医療保険が適用されない自由診療です
  • 顎関節の症状が改善しても、噛み合わせの状態を治療しないと後戻りの可能性があります
  • 使用するスプリントが筋肉に調和していないと、症状の悪化に繋がる可能性があります

マウスピース療法

透明で目立ちにくいマウスピースを使用して歯並びを整える方法です。

治療の注意点・リスク

  • 公的医療保険が適用されない自由診療です
  • 奥歯が噛まないことがあります
  • 1日の中で既定の時間使用しないと効果が出ません

咬合修復

咬合(噛み合わせ)が悪いと、食事がしにくいだけでなく、顎関節症の原因となります。当院は患者さまの健康のために、補綴治療を利用した咬合修復を行っています。

治療の注意点・リスク

  • 公的医療保険が適用されない自由診療です

顎関節症の治療の流れ

Flow01資料集め

  • 1.問診票に記入していただいた後、お口の中全体のパノラマレントゲンを撮ります。
  • 2.レントゲンを見た結果、歯科医師より状況の説明をいたします。
  • 3.顎関節・頭部における21箇所の部分的な触診を行います。
  • 4.姿勢を撮影して現在の身体の歪み具合などをチェックします。
  • 5.歯の模型を作ります。
  • 6.マイオモニター等で筋リザキゼーション
  • 7.立ち姿勢を考慮した咬み合わせ記録を取ります。

Flow02診断

上記資料をもとに、咬合器上における顎機能総合診断を行います。


Flow03治療

マウスピース療法

診断結果に基き、正しい咬合への誘導するためのスプリントとしてマウスピースを作製します。

歯科医師自身の手により咬合誘導のためのマウスピースを作製し、装着経過での身体症状の変化を観察しながら微調整を行い、正しい方向へ誘導します。生活上の注意・姿勢の癖などアドバイスを行います。


Flow03咬合修復

症状が消失し、正しい咬合が定まったら、ご希望に応じて補綴物を修復いたします。(※保険適用外)
※顎関節症機能総合診断料 ¥39,810(税込)
※筋リラキゼーション 月2回まで=保険適用 月3回目から 1回¥1,048(税込)
※スプリント調整料 月1回まで=保険適用 月2回目から 1回¥1,048~¥2,410(税込)

口腔骨整形科学的模型分析

  • HP&MSP
    (正中矢状面)

  • HP&ASP
    (補助矢状面)

  • CO分析

  • 上下ASP間距離、
    左右差(L>R)

頭頂部より見ると、切歯部を中心に下顎が右回転、左顎関節円板、内側転位、右円板、前方転位が関節雑音の存在の事実より考えられる。
また正貌セファロや顔貌写真で頭蓋、下顎肢の発育に左右差が見られないケースでは、下顎の左方重心傾向は頭位、ひいては、姿勢の左右重心を疑う可能性を示唆する。

スプリント作製時、咬合採得法

上下顎模型のHP*MSP*ASP*MTP(大臼歯前頭面)*CTP(犬歯前頭面)を軟化したパラフィンワックスを介して平行もしくは、備え、その位置で咬合器にマウントする。
咬合採得用ワックスは、予め咬合器上で厚みと維持(上顎に付ける)を調整しておく。

《Position1→2に誘導後、咬合採得。》
カメラの十字線を水平、垂直線に合わせ、ファインダー越しに姿勢を誘導、修正、練習を重ねた後に、歩行などでリザキゼーションの後に、調整済みワックスを均一に軟化し、乾燥した上顎歯列に貼り、姿勢が十字線に合った瞬間に「ハイ、合わせて。」と指示。(噛み切らないよう、事前に言う。)

スプリント療法による姿勢変化

Position1→2

体軸の湾曲はとれていないが、左前傾していた姿勢左図のように必要最低限、頭と足の位置を修正、すなわち、垂直線が外耳道と踝を通るように誘導した。

3/15~5/20

下顎安静位において体軸の正面観、左傾斜は改善されたが、胸から首にかけての湾曲を残す。側観は右図のように湾曲が改善された。

姿勢変化

下顎の左前方重心移動は、頭位の前方傾斜をもたらし右側の後頸筋は咬合再評価開始時、等尺性収縮による過緊張状態にあったと考える。

頭位を左前方に保っており、大きく動くのが左側胸鎖乳突筋である。 スプリント療法により、姿勢、および、頭位の左前傾が修正されると、今まで収縮し続けていた同筋が引き伸ばされ一過性のストレスを生じたと考える。

姿勢および頭位の左傾、下顎の左前方偏位により、機能的左前方に発生する早期接触を回避しようと開口筋である顎二腹筋は、下顎を右下方に引いていなければならず、右側の同筋は慢性的な緊張を強いられる。

咬合再評価後のMRI像

左右のバランスが取れたが右側円板の復位は確認できなかった

咬合再評価前後顎位変化

  • 上顎に対する下顎のHPの左上がりが改善

  • 上下顎ASP間距離が均一に改善

※参考文献:
「頭頸部・顎関節の痛みと機能障害の臨床」 HAROLD GELB, D.M.D. 編
やさしいこどもの「噛み合わせ」クリニック 萩原 和彦 著

顎関節症症例紹介

顎関節症治療

顎関節症治療

Before

After

症状 不定愁訴を持った全顎補綴が必要な患者さまにおいて、明らかに現在の下顎位が正しいと思われない場合、新しい治療咬合を模索する必要に迫られます。「咬合から全身へ」という観点から見た報告には咬合異常が及ぼす障害は顎関節だけではなく、全身症状までも含めた疾患として「咬合由来症」と名付け、「生体とバランスのとれ取れた下顎位」の重要性を強調している。 私も顎関節症治療に用いたスプリント療法中に起きた、姿勢の変化、全身症状の消失を観察した。その時に生じた変化を科学的に記録するために動的咬合に対してはMKG、静的咬合に対しては、模型診断(ゲルブ)その他、筋触診、シュラー、MRI、姿勢、顔貌の写真等で、経時的に観察したデータをもとに姿勢変化、消退した症状に科学性を持たせるべく努力しました。
年齢・性別 53歳女性
治療期間 3年/36回
治療方法 被検者は53歳女性、H8年2月より11月にかけて咬合再評価を行った。ハロルド・ゲルブ氏の模型診断をもとに咬合採得を行い、3月8日より4月1日にかけてスプリント療法を行い、その後はプロビジョナルストレーションに変え、様子を見た。
費用 360万円(平成6年5月当時)
└顎の診査・診断
└歯周病治療/根管治療/ワイヤー矯正/メタルボンド(26本)の治療を実施
デメリット・注意点 長期に渡る治療になるので、途中で中断すると良い治療結果が出にくくなります。そのため、患者さまのご理解とご協力のもと、歯科医師と一緒に進めていく必要があります。
備考 目の奥、首、肩、耳鳴り、耳の下の痛みがスプリント使用後2週間で消失 スプリント使用前の前傾、左傾斜の姿勢が改善し、プロビジョナルに変更後もそれを保っていた。 MKGは、ターミナル付近の改善は著しく、筋圧痛も消失していた。 MRIにおいて、円板復位は確認できなかった。

顎関節症にお悩みの方へ

院長

加藤 寛HIROSHI KATO

私たち歯科医師が歯並びおよび不良修復物により引き起こされた咬み合わせの不正を正す治療(咬合治療)を行う際に、 頭痛、肩こり、耳鳴りなど直接歯と関連がなさそうな悩みまで改善されることがあります。 それらが咬み合わせの不正が原因となって起こる症状かどうかはまだ明確に分かっている訳ではありません。 しかしながら私は、どのようなメカニズムでこのようなことが起きるのかを知りたく理解のある患者さまのご協力の下、 色々な方向から考察してきました。その結果、 咬み合わせと身体の歪みは密接な関係があると考えています。不正なむし歯治療や習慣、歯周病などで 失った咬み合わせを再構築する作業は、整体院の協力を得て痛みや色々な不快症状から解放された状態でかつ全身的に見て前後左右のバランスの取れた姿勢で模索する必要があると考えます。また、逆に全身的に考えられたバランスの良い咬み合わせは健康の維持に安定をもたらします。

資格
日本顎咬合学会認定 咬み合わせ認定医

料金について

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料金表
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